SAS航空の炎上動画を見て考える、北欧らしさと異文化交流

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スウェーデン・デンマーク・ノルウェーが共同出資しているスカンジナビア航空(SAS航空)がちょっと炎上しています。(執筆時)

「What is truly Scandinavian?」(本当のスカンジナビアってなんだろう?)というタイトルで公開したテレビ広告が物議を醸しているのです。

一言で言うと、「僕たちが思っている伝統的なスカンジナビア文化って、実は独自に作ったものはなくて、ぜーんぶ海外から来たものなんだよ。だから、みんなSAS航空に乗って、海外で見聞を広げて良い物を持ち帰ってきてね!」という内容です。(炎上した動画は、和訳と併せて記事の最後に載せてます)

SAS航空は、ちょっとしたユーモアのつもりで「北欧らしさとは何か」を問いかける広告を作ったのだと思いますが、これが、デンマーク・スウェーデン・ノルウェーの人達をかなり怒らせてしまいました。

なんと、SAS航空の公式YouTubeのコメント欄が炎上するだけでなく、この広告を作った広告代理店のコペンハーゲン本社に爆破予告まで!!

そりゃ、自分たちの文化は 「Nothing だ!」なんて言われたら、ちょっとムカつきますよね。

でもね。この広告、僕は「海外を見聞してくる意義」という本質を捉えたメッセージがあるとちょっと感動してしまいました!

***

僕は、 #海外生活 とか #留学 のタグがついたnoteを読むのが結構好きです。

その中でも特に好きなのが、「なぜ海外に行くべきか?」というテーマ。

やっぱり多いのは、
 ・海外に行くと視野が広がる!
 ・言語が習得できる!
 ・友達が増える!
といった意見。

うん!うん!そうだよね!と、いつも「スキ♡」を押してしまいます。

でも僕は、さらにもう一つ重要なことがあると思っています。

それは、「海外に行ってきた人達が、得た経験をヒントに自国で新しいもの生み出す」という側面です。

日本の場合、各地で多種多様な味を楽しめるラーメンは、もともとは中国から来た食べ物ですし、めちゃくちゃ便利なコンビニはアメリカから来たものです。

僕たちの食生活が豊かになり、生活が便利になったのは、誰かが、海外で見つけた良い物・仕組み・概念を日本に持ってきて、日本風にちょっとしたカスタマイズをしたおかげだと思うのです。

他にも、トヨタ自動車が誇る「トヨタ生産方式」のジャスト・イン・タイムは、アメリカのスーパーマーケットの仕組みにヒントを得たというのは結構有名な話です。

つまり、旅行でも、ワーホリでも、留学でも、駐在でも、海外に行く意義って↓な感じじゃないかと思うんです。

ミクロな視点:
視野が広がる・言語が習得できることで、個人としてのスキルや経験が高まる。

マクロな視点:
海外に行ってきた人達が、得た経験をヒントに自国で新しいもの生み出し、社会全体が良くなる。

SAS航空の広告は、あまりにも奇をてらった言い方をしてしまったがゆえに、広告としては大失敗なのですが、「なぜ海外で見聞を広めるべきなのか?」という重要な問いに対してすごーく良いメッセージを出していると思います。

もちろん全員が海外に行く必要はないし、海外がベストとはまったく思いません。

しかし、海外で見聞を広めてきた人が、そこで見つけた良いものを持ち帰ってきた後に、独自の新しいものを生み出すことがとても素敵だなと思います。それはスカンジナビアだけでなく、日本も、どの国も同じだと思います。

昨今の極右化やコロナウィルスなどによる閉鎖的なニュースで旅行や留学がネガティブな雰囲気になっていますが、改めて異文化交流の重要性に気づかされる良い動画だなぁと思いました。

炎上してしまったコメントは消されてしまいましたが、映像そのものはSAS航空の公式YouTubeでまだ見ることができます。是非、マクロな視点でCMを見てみてくださ〜い!

なお、大人の事情で消されてしまうかもしれません。もし↑で再生できなければ、Googleで「SAS What is truly Scandinavia ad」と検索すれば誰かがアップした動画が出てくると思います。

よくよく考えると、スウェーデンはノーベル賞やIKEAを生み出しているし、デンマークもLegoという革新的なおもちゃを作っているので、 本当のスカンジナビアはAbsolutely nothing というのはやっぱり言い過ぎだよなぁ

参考までに、僕の訳を書いておきます。若干、意訳してるところがありますがご了承ください。

***

What is truly Scandinavian?
本当のスカンジナビアってなんでしょう?

Absolutely nothing.
なんにっも、ありません。

There is no such thing.
そんなものは存在しません。

Everything is copied.
すべてコピーなんですから。

Our democracy?
私たちの民主主義は?

Credit goes to Greece.
それは、ギリシャの功績。

Parental leave?
育児休暇は?

Thank you, Switzerland.
スイスのおかげ。

The iconic Scandinavian windmills were actually invented in Persia.
スカンジナビアの象徴ともいえる風車、実はペルシアが発祥。

And, we made the German bicycle a staple of our cities. 
そして、ドイツが発明した自転車は、私たちの街で欠かせません。

Thank you, Germany!
ドイツさまさまですね!

What about the bread?
それなら、パンは?

It’s Turkish.
それはトルコ発祥。

Smørrebrød?
スモーブローは?(訳注:デンマークの伝統料理、オープンサンドイッチ)

Dutch.
オランダ発祥。

What about liquorice?
リコリスは?(訳注:日本人は苦手な人が多いハーブで作った黒いお菓子)

It’s Chinese.
それは、中国発祥。

Midsommarstång?
ミッドサマーは?(訳注:スウェーデンで有名な夏至祭で見られる草木で出来たポール)

German.
ドイツ発祥。

And it gets worse.
さらに悪いニュースです。

Rumour has it also the Swedish meatballs might not be as Swedish as you think, but Turkish.
一説によると、スウェーデンのミートボールはスウェーデン発祥ではなくて、トルコだそうです。(訳注:ミートボールはIKEAのレストランでも売っているスウェーデンの国民食です)

Even the Danish isn’t Danish.
しかもデニッシュもデンマーク発祥じゃないんです。

It’s Austrian.
実はオーストリア発祥。

And the pride of Norway, the paperclip, was actually invented by an American. 
ノルウェーが誇るゼムクリップも実はアメリカ人の発明。

And while we are at it…
ついでに言うと、

America, thank you for taking the first steps in empowering the women’s rights movement!
女性人権運動の最初の一歩を踏み出してくれたのはアメリカです!

We are no better than our Viking ancestors. 
私たちは先祖のヴァイキングから何も変わっていません。

We take everything we like on our trips abroad, adjust it a little bit…
海外で見つけた好きなものを持って帰って、ちょっとカスタマイズ…

Voila! 
ほら!

It’s a unique Scandinavian thing!
そこがスカンジナビアの特別なところなのです!

Going out into the world inspires us to think big, even though we are quite small. 
私たちは非常に小さい国ですが、世界に出て行くことで大きな考えを生み出してきました。

Because every time we go beyond our borders, we add colours, innovations, progress, adding the best of everywhere to here. 
なぜなら、国境を越えていく度に、色を足し、イノベーションを起こし、進化させながら世界の良いところをここ(スカンジナビア)に付け足していくからです。

In a way, Scandinavia was brought here piece by piece
スカンジナビアは少しずつ他から持ってきたとも言えるでしょう。

by everyday people who found the best of our home, away from home. 
というのも、ふるさとから遠く離れたところで、日々、ふるさとにベストなものを見つけてくれる人達がいるから。

So, we can’t wait to see what wonderful things you’ll bring home next. 
SAS航空は、お客様が持ち帰ってくる素晴らしいものを楽しみにしています。

***

※追記※
この記事を投稿した後にYahoo! ニュースを見たら、SASの炎上動画が取り上げられてた!

北欧の伝統は「すべてコピー」 航空会社のCMが炎上

【2月15日 AFP】スカンジナビア航空(SAS)が、北欧の伝統の正統性に疑問を呈する新CMを公開し、非難を浴びている。

北欧の伝統は「すべてコピー」 航空会社のCMが炎上(AFP=時事)

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