【詳細版】個人事業の始め方 (フリーランスや副業をしたい方向け)

投稿日: 2022-04-11 更新日: 2023-03-02 投稿者: ASH

今日はデンマークに住んでいる方向けの内容、しかもちょっとちょっとニッチな内容💦

と言うのも、内容はデンマークでフリーランスのような個人事業を起こしたり、副業をしたりする際に必要な手続きの概要紹介だからです。

ちょっとニッチな内容ですが、デンマーク在住の方から度々お問合せをいただくので、noteに残しておくことにしました。

なお、内容はあくまでもざっくりした大きな流れの紹介です。ルールや手続きが変わってしまうこともありますし、内容に誤りもあるかもしれませんのであくまでも参考レベルとしてご覧いただき、SKAT税務署、SIRI移民局、Virk企業庁などの管掌当局にて公式なルール・手続きを確認ください。

1. 対象の方
2. ざっくりした流れ
3. おすすめのウェブサイト

対象の方

デンマークで個人事業主として事業を起こしたい方（フリーランスも含みます）
デンマークで本業を持ちつつも、本業以外の副業として事業を起こしたい方

なお、デンマークで株式会社、組合、一般社団などの法人を設立する場合、事業登録の手続きが少し複雑になりますが、大きな流れはほぼ一緒のはずです。

また、趣味の一環で収入が生じる場合、事業登録は不要なのでいくつかのステップを省略できます。（ただし趣味の延長で生じた収入であり、生計を立てるために必要な収入でなく、年間50,000クローネを超えない場合です）

ざっくりした流れ

ざっくりした大きな流れは👇のような感じ。

事業形態を決める
Residence Permitの就労条件の確認
事業登録
事業用銀行口座の開設（1〜2ヶ月ぐらい時間がかかります）
税金の事前申告（開業後、毎年必要な手続きです）
確定申告（開業後、毎年必要な手続きです）

デジタルデンマークなので、ほぼ全ての手続きがオンラインですぐに完了しますが、ステップ4の銀行口座開設だけは待ち時間や銀行審査のやり取りが発生するので、余裕を持って手続きをするのがおすすめです。

また、ステップ5と6の税金手続きは開業後、毎年発生する手続きです。

ステップ1 – 事業形態を決める

デンマークでは事業活動をするためには「CVR番号」という法人番号を取得する必要があります。

事業用のマイナンバーのようなものなのですが、基本的にこのCVR番号がないと銀行口座を開いたり、補助金を申請したり、他の企業との取引ができません。

CVR番号を取得するための手続きが「事業登録」
ですが、どのような形で事業を行うかをあらかじめ決める必要があります。

株式会社や組合・一般社団法人という法人を作る方法もありますが、今回は「個人事業主」として選択できる3つの事業形態を紹介します。

オプション①　PMV(Personligt ejet mindre virksomhed)
オプション②　Enkeltmandsvirksomhed
オプション③　Hobbyvirksomhed

まず最初のオプション① PMV(Personligt ejet mindre virksomhed) は、小規模なミニ個人事業主。

過去12ヶ月の売上収入が50,000クローネ（約90万円弱）を超えてはならないという制限がありますが、VAT(消費税)の支払い義務がなく管理が楽ちんな形態です。

PMVは年間売上の上限が90万円弱なので、生活を営むための事業には向いていませんが、クラウドソーシングやミニフリーランスなど、副業的に個人事業を行うのにちょうどいい感じになっています。

またEU圏外との取引にも制限があるため、EU圏外への物品の輸出入はできないところは注意です。

次のオプション② Enkeltmandsvirksomhed は、いわゆる普通の個人事業主用の形態。個人事業主で生活するレベルの収入を得る場合(PMVが選択できない場合)、基本的にこのEnkeltmandsvirksomhedになると思います。

PMVと違い、VAT (消費税)の申告義務があるため、3ヶ月ごとに支払った消費税と受け取った消費税を税務署に報告し、納付または還付を受ける必要があります。消費税の記録をきちんと管理しないのでちょっと面倒かもしれませんが、収入制限等はないので大きなビジネスを行うことも可能です。

最後のオプション③　Hobbyvirksomhedは、いわゆるHobby Businessというもので、趣味の一環で収入が生じる場合に選択できます。事業登録が必要ないのでStep3と4をスキップできますが、生計を立てるためでなく、趣味の延長で生じた少額収入(年間50,000クローネ以内)の場合にのみ選択できます。

また、①のPMVと②のEnkeltmandsvirksomhedは、事業損失が出たら本業の収入を相殺することで税金を少なくすることができますが、Hobbyvirksomhedで損失が出ても他の収入と通算することができないため、副業をしている方にはデメリットかもしれません。

ステップ2 – Reidence Permitの就労条件の確認

ここはとても重要なステップです。

お持ちのResidence Permitの種類によっては就労の禁止、就労時間の制約(週20時間までなど)、副業禁止など、就業に関する禁止事項や制限事項がある可能性があります。

人によって状況が異なりますので、ステップ1で選んだ形態で事業を立ち上げても大丈夫かSIRIに確認するのが安全かと思います。

Ny i DanmarkNyidanmark.dk er den officielle internetportal om reglerne fowww.nyidanmark.dk

特に Work Permit でデンマークに滞在されている方は要注意。

デンマークのWork Permitは、就業している会社以外で仕事を行うことが原則禁止されています。うっかり、副業をしちゃうと違反となり最悪Residence Permitの取り消し（国外退去）になる可能性もあり得ます。

普通の一般企業で働いている方以外にも、PhDや研究で来られている方も同様の副業制限があるそうです。

なお、副業をOKにするための方法もありますが、ここでは割愛します。

ステップ3 – 事業登録

PMVもくはEnkeltmandsvirksomhedを選んだ場合、事業登録を行います。

日本では紙の開業届を税務署に提出しますが、デジタルデンマークではNemID/MitIDを使い、Virkというウェブサイトでオンライン登録できちゃうのでとても簡単です。

VirkVirk er virksomhedernes digitale indgang til det offentlige.virk.dk

オンラインでの申請が終わり、CVR番号が発行された登録完了です。

※ Hobby business (Hobbyvirksomhed)の場合、このステップは不要です

ステップ4 – 事業用銀行口座の開設

デンマークでは、原則、事業用と個人用の銀行口座を分ける必要があります。

そのためCVR番号をゲットしたら、すぐに事業用の銀行口座を申請しましょう。

銀行によっては、事業の計画書の提出を求められたり、電話でちょっとしたインタビューが設けられたりします。

ただ、デンマークの銀行は口座開設申請をしてからの待ち時間がとても長く、手続きが完了するまで1、2ヶ月ほどかかることが多いようです。

実はデンマークでは現金取引がNGなことが多く、事業用の銀行口座を開設できないと、クライアントからお金を受け取れなかったりします。口座開設に時間がかかるとクライアントの入金を待ってもらわないといけないので、できるだけ早く手続きを開始するのがおすすめです。

※ Hobby business (Hobbyvirksomhed)の場合、このステップは不要です

ステップ5 – 税金の事前申告

ステップ3の事業登録が完了したら、今度はSkatのウェブサイトで税金の事前申告をします。 (こちらもNemID/MitIDでログインできます)

Skat.dk: BorgerDenne side er din adgang til skat.dkskat.dk

ここで提出するのは Preliminary income assessment (forskudsopgørelse) というもの。

事前に今年(1月から12月まで)の収入がどのくらいになるか、見積もりを登録します。

副業をしている場合、ここで入力した見積もりにもとづいて本業のお給料から副業の方の税金が差し引かれるようになります。👇のnoteでも紹介したようにちょっと多めに見積もる方がおすすめです。

https://note.com/embed/notes/nbf7f30536ab0

Preliminary income assessmentは、いつでも何度でも変更することができます。なので、もし事業収入が大きく変わるようでしたら、適宜更新しましょう。入力した予測収入に応じてSKATが税金を計算し直してくれます。

※ 本ステップは事業開始後、毎年実施が必要です

ステップ5 – 確定申告

このステップも毎年行う恒例行事。年が明けたら1月から12月までの事業決算を行い、事業収入を確定させて、Skatのウェブサイトで確定申告を行います。

収入が多ければ税金を納付することになりますし、源泉徴収などで税金を払いすぎていたら還付してもらえます。