実用的なメリットがいっぱい! デンマークのIT技術者向け労働組合「PROSA」
前回は、日本とちょっと異なるデンマークの労働組合の紹介をしました。
記事でも紹介したように、デンマークの労働組合は産業組合なので、レストランで働いているなら飲食業界向けの組合、学校で働いているなら先生向けの組合、病院で働いているなら医者や看護師向けの組合、など、自分の職種や業界に適した組合に加入することが一般的。
必ずしも職に就いている必要もなく、「私は先生になるための勉強をしている」「学校ではないけど教育に関する仕事をしている」と考えていれば、無職でもパートタイムでも、基本的に好きな組合に加入することがでるのが特徴。(※ 医者や弁護士など、加入資格が必要な組合もあります)
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さて、僕は European Sperm Bank というデンマークの精子バンクで働いているので、産業的にはヘルスケア。最近の言葉で言うならフェムテック?
でも仕事はいわゆるデジタル・トランフォメーションのお仕事。
だから、IT技術者向けの「Prosa」という組合に加入しています。
この組合の会費は、月々409クローネ(約9,000円)
ちょいっと値が張りますが、デンマークの組合はかなり実用的なので、加入するとたくさんのメリットがあります。
※1 – 組合費は税金控除の対象なので実質的には7,000円ぐらいの負担です。
※2 – 任意の失業保険(A-Kasse)に加入する場合は、組合費が2〜2.5倍ほどになります。
目次
メリット① 法律相談
仕事に関して、様々な法律相談をしてくれます。
例えば、雇用契約に不当な条件がないか、競業避止条項・機密保持契約条項など注意を要する条件がないかなどの事前確認。
これは、デンマークの商習慣が分からない外国人にとってはかなりありがたいサービスで、僕は転職の際に、前職の退職手続きに関して注意すべきポイントを教えてもらい、とても助かりました。
また、パワハラやセクハラ、不当解雇に対する法律相談もしてくれるので、もしもの時にはすぐに相談ができるはずです(幸いにも利用したことはないですが・・・)
メリット② キャリアアドバイスや仕事の斡旋
組合のキャリアコンサルタントが、スキルにマッチする仕事探しを手伝ってくれるので、無職の方や学生さんにとっても組合加入は意味があります。
日本のハローワークに近いところがありますが、履歴書の添削や面接の練習なども付き合ってくれるので、より実用的かもしれません。
ちなみに無職の場合や学生さんは組合費がかなり安くなるので、加入しやすいようになっています。
メリット③ 無料の研修やオンラインコース
僕的にはこれが何より嬉しい特典!!
1500〜2500クローネ(約3〜6万円)するような研修やオンラインコースが無料で受け放題!
例えば、👇は、流行りのChatGPTを使いこなすためのオンライン講座。
通常価格はなんと2,525クローネ(約6万円)ですが、組合員は無料〜。
講座をひとつ受講すれば、新しい知識も得られるし、半年分の組合費の元が取れちゃう計算です。
ただ、唯一惜しいところは講座の多くがデンマーク語という点 😅
英語のコースもたくさんありますが、もっと増やして欲しいなぁと思っています。
メリット④ ソーシャルイベント
組合主催で結構楽しいソーシャルイベントも開催してくれます。
例えばですが、デンマークの地ビール「Mikkeller(ミッケラー)」のビールテイスティングイベントはとても面白かった!
貸し切りのMikkellerのバーで5種類のビールを味わったら、もうほろ酔い気分です☺️
先日は、映画館を貸し切り、公開されたばかりの 「Dune 2 〜 デューン 砂の惑星 Part2」の上映会も!
僕はオーフスに住んでいるので、オーフスでのイベントにしか参加していませんが、コペンハーゲンではもっとたくさんのイベントがあるようです。
できれば今度はコペンハーゲンのイベントにも行ってみたいなぁと思っています。
メリット⑤ 提携銀行や保険での優遇特典
Prosaは、Lån & Sparという銀行と提携関係にあるそうで、Lån & Spar で口座を作ると優遇金利特典が得られます。
本記事執筆時点では、一般的な預金利息金利は1%前後。
一方で、組合員がLån & Spar銀行で口座を持っていれば、5%の利息金利がもらえます。(最大50,000クローネの預金適用。50,000クローネを超える預金の利息金利は1.25%)。
Lån & Spar 銀行は口座維持手数料が無料なので、利息が多くもらえるとさらにお得ですよ。
実際に銀行を変えた話は👇
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日本で僕が所属していた会社の組合では、意味があるのか分からない「職場集会」ぐらいしか無かったような印象しかありません。
だから、色々な特典があるデンマークの組合はとても実用的で労働者に寄り添った活動に見えます。
もしかすると日本の労働組合は企業毎に分かれすぎていてパワーが足りず、活動がこじんまりとし過ぎているのかもしれません。
日経新聞でも指摘されているように、環境変化が著しくなる中、企業の枠組みを超えて対応していく必要があるような気がします。
「労使協調」に変化の時 資本の論理とデジタル化が促す 編集委員 水野 裕司 - 日本経済新聞
セブン&アイ・ホールディングスの百貨店子会社、そごう・西武の労働組合が31日、大手企業では異例のストライキに踏み切った。西武池袋本店(東京・豊島)は全館休業となった。日本企業に定着してきた労使協調は変わり目を迎えている。資本の論理の浸透やデジタル化を背景に、労働組合の役割が問い直されている。争議件数は減少傾向、背景に「企業別組合」日本では労働争議の件数が、近年さらに減っている。厚生労働省の労