日本と欧州のコロナ統計比較で思ったこと
先日、日本とイギリス統計局が各国の超過死亡率を比較する調査を発表しました。(日本は7月31日発表、イギリスは7月30日発表。偶然か、タイミングを調整したのか分かりませんが・・・)
超過死亡とは、例年と比べて死亡者がどのくらい多かったかを調べる指標で、コロナがなければ亡くなっていなかったと考えられる死亡者の数(要はコロナによって直接的・間接的に増えてしまった死亡者の数)を見積もることができるそうです。
Analysis of all-cause mortality patterns of selected European countries and regions, week ending 3 January (Week 1) to week ending 12 June (Week 24) 2020.
Comparisons of all-cause mortality between European countries and regions
その中で見つけたのがこちら↓のグラフィカルなデータ。(下の画像をクリックするとイギリス統計局のサイトで動画を閲覧できます)
例年よりも30%以上死亡者が増加した地域が橙色〜濃い茶色になるのですが、最初は青色一色だった欧州が、3月に入るとイタリア北部とスペインが濃い茶色になり、4月にはイギリスが茶色に染まっていくので、欧州におけるコロナのインパクトがビジュアルにわかりやすい。
濃い茶色は例年に比べて2.5倍以上死亡者が増加したということなので、日本に比べると、コロナは欧州で猛威をふるったことがよく分かります。(ピークで言うと、スペインは5倍、イタリア北部は4倍の死亡率だったそうです)
一方で、デンマークはほとんど色が変わらず。早い段階でのロックダウンが功を奏したのがよく分かります。
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さて、日本のNIID(国立感染症研究所)の発表は↓のサイトで公開されていますが、残念なことにイギリスの統計局の発表に比べるとなんだか分かりにくいし、つまらない・・・
我が国における超過死亡の推定(2020年4月までのデータ分析)
日本における新型コロナウイルス感染症流行期(2020年1月~4月末)の超過死亡を推定した。
我が国における超過死亡の推定(2020年4月までのデータ分析)
そもそもグラフが1つもないので、ビジュアル的に退屈なのですが、つまらない原因はそれだけではなさそう。
なんでかなぁと思って、イギリス統計局の発表と国立感染症研究所の発表を比較していたら、やっと気がつきました。
国立感染症研究所の発表は、
「どうやって超過死亡者数を推計したか?」という手法の説明になっていて、
「推計した超過死亡者数から何が言えるか?」についてはまったく答えていません。
実は考察がまったく書いてないのです。
ちょっと辛口にいうと、
お金と工数をかけてデータを「集計しただけ」で終わっていて、
「分析」までたどり着いていない感じ。
(集計方法は欧米が開発したものなのでそこに目新しさもない)
ビジュアルに凝る必要はないと思いますが、注目度が高いデータなのでもっと考察まで踏み込めばよかったのに・・・。それが専門家としての国立感染症研究所の価値だと思うんだけどなぁ。