地域の分け方に宗教観と歴史を感じるデンマーク
昨日のnoteで、デンマークの「小規模地域を対象にしたロックダウン」というものを紹介しました。
小規模地域というのは本当に小規模で、日本で言うと都市圏の学区域のような感じ。人口でいうと数千人ぐらいなので、人口規模で例えるなら「村」といった規模感かもしれません。
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日本の行政区画は、まず都道府県があり、その下に市町村(東京は特別区)があり、政令指定都市の場合はさらに行政区に分かれるという構造です。
デンマークの行政区画は、まず5つの地域(Region)に分かれ、その下に基礎自治体という98のmunicipalities(デ: kommuner)が行政を担っています。
例えば僕が住んでいるオーフス市の場合は、 中央ユラン地域(Midtjylland)のオーフス基礎自治体(Aarhus Kommune)に所属している街という感じです。
ちなみに、狭義のオーフス市はオーフス基礎自治体の中の都市部とその近郊だけを指すようですが、人によって定義が違うようです。
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さて、冒頭の「小規模地域を対象にしたロックダウン」で指す地域というのは、基礎自治体をさらに細分化した sogn という区画。かなり細分化されているので、オーフス基礎自治体の中には58個の sogne (複数形なので語尾がe) があるようです。
👇はWikipeidaで見つけたデンマークを sogne に分けた地図。コペンハーゲンとオーフスは細かすぎて真っ黒ですね 😅 なお、ひとつひとつの Sognには、行政機能はありません。そのため、位置付けとしては町内会や学区域的な扱いのようです。
画像出所: Kaffe42, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
興味深いことに、Sogn を英訳すると「Parish」という単語に翻訳されました。
アメリカやオーストラリアだと、area とか suburb という言い方が多いので、Parish ってあまり聞いたことがないなぁ🤔 それに、日本の「区」はWardとかDistrictと訳されることが多いし・・・
そう思って、もう少し調べてみると、 Parish というのは「小教区」という意味だそうです。
宗教的な用語で、キリスト教会が使っていた行政区画の名前のよう。大昔の欧州では、大聖堂や大教会を中心に地域が教区(diocese)に分けられ、さらにその下部行政地域として小教区(parish)というものを設置していたようです。
そしてデンマークの場合も、国王(または女王)が長を務める「デンマーク国教会」があり、その国教会の下で国を「教区」に分け、さらに教区に属する「小教区」を管理することで、地域レベルの行政を行っていたようです。
今でこそは行政機能はありませんが、歴史的な名前がそのまま引き継がれて、Parishという名前が残っているようです。
政治や行政での宗教的な要素を薄めているオーストラリアやアメリカではあまり聞かない用語だったので、ちょっと勉強になりました。
同じ英語でも、国が変わると使っている単語が変わったりするのは、歴史的な理由や文化的な背景があるからなんだろうなぁ(← これは、奥さんの修士論文のテーマかの受け売りです 😝)