デンマークvs中国 言論の自由と共感力
デンマークの大手新聞紙が、中国の国旗の星の部分を新型コロナウィルスに置き換えた風刺画を月曜日に掲載したことに対する中国政府の抗議に関して、ここデンマークではメディアでちょっとした議論が起きています。
中国国旗にコロナウイルス デンマーク紙が風刺画を掲載:朝日新聞デジタル
デンマークの大手紙ユランズ・ポステンが、中国の国旗「五星紅旗」の星の部分を新型コロナウイルスに置き換えた風刺画を掲載した。現地の中国大使館は「中国への侮辱で、中国の人々を傷つけるものだ」と謝罪を要求…
中国国旗にコロナウイルス デンマーク紙が風刺画を掲載:朝日新聞デジタル
中国大使館が新聞社に対して「謝罪を要求」したことが「言論の自由を侵された」と考えるデンマーク人の反発と議論を呼んでいるようです。
その中でもユニークだなぁと思うのが、Facebook上でのオープンな議論です。
Facebookには、Aarhus Internationals というオーフスに住んでいる外国人向けのコミュニティグループがあるのですが、今日のお昼過ぎに↓のようなポストが投稿されました。
「風刺画についてどう思う?」という投稿なのですが、あっという間に92個のコメントです。
グループには28,000人のメンバーがいる上に、Facebookではほとんどの人が実名を使うのにも関わらず、結構オープンに自分の意見を発言するんだなぁと感心してしまいました。
議論内容をちょっと抜粋してみますね。
風刺画に肯定的な意見(中国政府に批判的な意見)
・中国のようにメディア統制しているような国から文句を言われる筋合いはない!大体、流行し始めた時に情報操作してたじゃないか!
・南アメリカで流行したジカ熱の時には様々な風刺画が出たけど誰も抗議しなかった。中国政府はユーモアセンスを磨くべき!
侮辱する意図はなかったのだから謝る必要はない!
風刺画に否定的な意見
・侮辱する意図はなくても、そう受け止められたら謝るべき。意図しなくて言った言葉が友達を傷つけたら謝るでしょ?
・言論の自由は守られるべきだけど、家族を亡くした方や武漢で大変な思いをしている人への共感や配慮はできたんじゃないの?
・謝罪や撤回する必要はないけど、風刺画としてはセンスないよね。
概ね「言論の自由は守られるべき」という意見は全体的なコンセンサスな感じですが、「傷つける意図がなかったから謝罪は必要ない」という意見と「共感や配慮が欠けていたら謝るべき」という意見がある種の対立構造を作っています。
「言論の自由で傷つく人がいる」という難しい課題ですね。
僕の意見は?というと・・・
風刺画としてはWitさ(賢さ)がなくてお粗末!と考えています。例えば、中国のメディア規制に対するメッセージ性が風刺画に埋め込まれていれば「賢い!」と言えるけど、ただ国旗をもじっただけというのはイマイチ。「山田くん、座布団全部持っていって!」という印象です。(新聞記事本文がデンマーク語で内容を読めていないため、あくまでも風刺画だけの印象です)
また、一方で中国政府の対応が下手だったと思います。いきなり強い抗議と謝罪を求めるという構図が、言論の自由を大事にするデンマーク人の感情を逆撫でしてしまいました。頭ごなしに抗議するのではなく、言論の自由に基づいて、コロナウィルスで亡くなっている方や武漢で大変な思いをしている方への共感や同情を誘うような抗議方法があったと思います。
結局、お互いの共感力不足でしょうか。新聞社と中国大使館の両者にもう少しCross-cultural Understandigがあれば、変なところで議論にならなかっただろうに・・・。
今は見守ることしかできませんが、新型コロナウィルスが早く収束することを切に祈っています。