デンマークの労働政策「フレキシキュリティ」を担うシンプルな解雇ルール

つぶやく シェアする

デンマークの労働市場は流動性がとても高いと言われています。

平たく言うと「転職する人」がとても多いということ。

日本での転職者比率(1年間以内の転職者が就業者を占める割合)はおよそ5%弱。

対して、デンマークの転職者比率は12%前後ということなので、日本の倍以上の規模で転職しているという計算です。

一方、転職者が多いとはいえ、実は本人の意思で転職していないケースも多かったりします。

デンマークでは、解雇ルールが明確なので社員解雇をしやすいため、リストラされる人も多いからです。

デンマークの解雇ルール

デンマークの雇用制度を定めているFunktionærloven (The Salaried Employees Act)によると、会社は一定期間前に解雇通知するだけで、社員を解雇する権利を持っています。

どのくらい前に解雇通知しないといけないかは、勤続年数によって変わるので👇の通り。

  • 6ヶ月以内 – 1ヶ月前通知
  • 6ヶ月越え3年以内 – 3ヶ月前通知
  • 3年越え6年以内 – 4ヶ月前通知
  • 6年越え9年以内 – 5ヶ月前通知
  • 9年越え – 6ヶ月前通知

ちなみに解雇通知の事前期間は月末から数えるのが原則。

だから、例えば5年勤続した人が、4月17日に解雇通知を受けた場合でも4月末日から4ヶ月を数えた8月31日が最終出社日という計算になるそうです。

一応、解雇理由は必要

一定期間前に解雇通知をすれば、社員を解雇できる仕組みですが、会社としては誰でも自由に解雇していいわけでありません。

そこには解雇するための客観的な理由がないといけないことになっています。(例えば、営業成績が見合わない、スキルがポジションに求められているレベルに見合っていない、事業から撤退するので部署ごとなくなる、など)

ですが、解雇通知の際にその理由を言わないといけないか?というと言う必要はなかったりします。

なので解雇された側は「解雇理由を聞く権利」というのがあります。逆に言うと、聞かないと教えてくれないかもしれません。

なお、適切な解雇理由がない場合、もしくは裁判などで不当な解雇理由に該当した場合、一定金額の補償金がもらえることになっているので、解雇理由は必ず確認した方が良いそうです。

解雇通知から最終出社日まで何をするか?

さて、解雇通知から最終出社日までの期間、フクザツな気持ちですが、仕事を続けないといけないというのが基本原則です(一応、雇用契約が続いているので)。

でも、本当に仕事をしないといけないかどうかは、会社との交渉次第。

多くの場合は、最低限の引き継ぎだけして、ほとんど出社することはありません。

状況によっては、事前期間分の給料がキャッシュで支払われて即退職というケースもありです。

仕事を続ける場合でも、次の職場探しや面接へ赴くなど、就業時間中の就職活動が認められるそうです。

退職したい場合の事前通知

Funktionærloven (The Salaried Employees Act)は、社員本人が退職したい時の事前通知についても規定しています。

いわゆる退職願を出すタイミングですが、勤続年数に関わらず、一律1ヶ月の事前通知となっています。

こちらも月末から数えるのが原則なので、転職の際はちょっと注意が必要です。

例えば、4月15日に転職先で仕事を始めたい場合、👇の段取りになるので退職願は3月15日ではなく2月末日までに提出です。

  • 2月末日に退職願
  • 3月末尾が最終出社日
  • 4月15日から転職先での仕事をスタート

うっかり3月に退職願を出してしまうと4月から転職先で仕事をスタートすることはできません。

退職願にフォームとかはなく、シンプルに「”I hereby resign from my position as of today, with my last working day being on xxx (最終退社日).」というようなメールを上司(もしくは人事)に送るだけでもOKです。

デンマークの労働政策 – フレキシキュリティ

さて、日本に比べると、デンマークの解雇ルールと退職ルールは、いずれもシンプル。

特に、明確に定められた「事前通知期間」は共通ルールになっていて、会社側にも社員側にもメリットがあるような設計になっている印象があります。

これは、デンマークが標榜する「フレキシキュリティ(Flexicurity)」の良い例なのかもしれません。

※ フレキシキュリティ(Flexicurity) – 退職・解雇しやすくすることで労働市場の融通性を高めつつ、手厚い社会保障で労働者の生活を守る政策。成長産業への労働力の移動を促す柔軟性(Felxibility)と、労働者は成長市場に労働力を同一企業内の雇用保証ではなく、切れ目なく雇用機会を確保できるようにする安心さ(Security)を合わせた造語。
(参考文献: https://www.jil.go.jp/column/bn/column072.html)

会社側からすると解雇ルールがはっきりしているので、解雇しやすいという融通性が得られます。(日本は、会社側の解雇回避努力義務があるので解雇しにくくなっています)

一方で、解雇される従業員にとっては、「長めの事前通知期間」があるので、いきなり生活に困ったりしないという安心感があります。(日本の解雇事前通知は勤続年数に関わらず一律30日しかありません)

***

幸いなことに僕は解雇されるという立場になったことがありませんが、いつ何時、そんなことが起こるか分かりません。

その時にはきっと気落ちするだろうなぁと思います。

でも、事前通知期間の数ヶ月があれば、ちょっと気が楽になるに違いないかも。

つぶやく シェアする

\新着記事や🇩🇰の日常をツイートします/