越境ワーキングが救うのは人材なのか?
日経COMEMOさんの「 #越境ワーキングが救う人材 」という面白そうなテーマ募集を発見!
https://note.com/embed/notes/n689458821977
現在、デンマークの会社で働いていますが、実は日本のグロービス大学院のビジネススクールで教壇に立つリモート講師でもあるので、どうやら僕は日経COMEMOさんが言う海を超えて働く「越境ワーカー」のよう。
なので、このテーマについてnoteを書いてみることにしました〜!
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なお、現在デンマークにいるのは、フリーランスをしていた奥さんがオーフス大学院に留学を決めたから。
奥さんが「2年ぐらいだったら、無職&学生でも生活できるよー。会社辞めて一緒くるー?」と言ってくれたこともあり、14年勤めた会社を退職してデンマークに来ました。
当時から複業的にグロービス大学院で教えていたのですが、対面授業が原則だったので、デンマークに来る際に講師もいったん辞めることなりました。
ところが!コロナの影響を受け、グロービス大学院が対面授業をリモート授業に切り替えることに! そこから講師ひぐちがオンラインで復活〜〜となりました。
幸運なことに、同じタイミングでこちらでの仕事も見つかり、まさに複業で越境ワーキング中という状況です♪
(複業については『成長につながった僕の複業体験 – 「#成長につながる複業とは」』の記事をご覧ください〜)
目次
越境ワーキングが救うのは人材なのか?
さて、パートナーの仕事や勉学の都合で海外へ帯同する方を駐妻・駐夫と言うそうで、僕もカテゴリー的には駐夫です。(留学生に帯同する留妻・留夫という言葉もあるようなので、厳密に言うと留夫かな?)
日経COMEMOさんの記事で紹介されている通り、駐妻・駐夫はパートナーの都合で会社を辞めたり、休職したりと、キャリア的にちょっと不利になりやすい。
一方、越境ワーキングの機会が増えれば、パートナーの転勤や留学に帯同しても仕事を継続できるようになるので、駐妻・駐夫の立場からすると、越境ワーキングによってキャリアの断絶が防げるので救われるかもしれません。
だから、日経COMEMOさんは #越境ワーキングが救う人材 というハッシュタグにしたのかもしれませんが、僕はちょっと違う意見。
越境ワーキングの活用で救われるのは、せっかく育てた社員を失わずにすむ企業側だと思うからです。
そして特に救われるのは、日本で多いメンバーシップ型の企業。
メンバーシップ型の企業の本来の姿は、長期的な視点で社員に様々な経験やスキルを蓄積させることで、会社全体の生産性を高めるということ。だから、新卒採用にかなりの手間をかけ、社員研修などの教育投資を充実化して、業務やジョブローテションで経験やノウハウを蓄積させるわけです。
でも・・・
社員のパートナーが駐在・留学となると、せっかく育ててきた社員が駐妻・駐夫として辞めちゃうかもしれないのです。
これは海外だけでなく、国内転勤せざるをえない場合も同じ。
社員の都合というよりも、社員のパートナーが務める会社の都合で人材を失ってしまうってかなりもったいない >_< (優秀な社員なら機会損失はなおさらデカい!!)
もちろん最近は、帯同者用の休職制度を用意する企業も増えました。でも休職なので、戻ってくるまでは働くことができない点ではやっぱり機会損失です。それに休職後には会社を辞めてしまう確率が非常に高いことも要注意かも。
25〜45歳の労働力人口が年々減っている日本。苦労して採用した若手・中堅世代をパートナーの転勤という理由だけで失う余裕はあるのでしょうか?
(出所: 総務省の労働力調査 – 長期時系列データをもとに作成)
だから思うのです。この記事につける本当のハッシュタグは、「越境ワーキングが救う人材 」ではなくて、
「 #越境ワーキングによる人財活用で救われる企業 」ではないかと。
企業に求められるのは上司のマネジメント力
現実的な点で言うと、越境ワーキングを実現するためには、フルリモートを前提にした雇用ルールや税金・社会保障などの条件などを整備する必要があります。
でも、会社制度よりも重要なのは、越境ワーカーと業務内容の直接的上司にあたる中間管理職や中堅リーダーのマネジメント力の強化。
会社が越境ワーキング制度を整備したとしても、日本にいる上司のマネジメント力が低いと👇のような状況になってしまい、結果的に越境ワーキングは定着しません。
■ 越境ワーカーが優秀でも、その能力を最大限活かせるような仕事をアサインできない
■ 越境ワーカーの状況や仕事の進捗が見えなくなり、越境ワーカーが十分な働きをしているのか、正しく評価されているのか分からなくなる(最悪、管理者責任も問われちゃうかも)
■ 越境ワーカーが完全に個人ワークとして孤立してしまい、チームとしての最適化や総合力の発揮ができなくなる
・・・などなど・・・
日本で管理職をしていた経験とデンマークの会社での働き方を踏まえると、越境ワーカーの上司が持つべきマネジメント力は次の3つかなぁと考えます。
① 業務を適切に切り分ける権限委譲力と丸投げにしないサポート力
越境ワーカーは、フルリモートになるので、緻密な業務指示が難しいケースが多いかもしれません(時差が大きいと特に!)。なので、細かな指示がなくても、自律的に仕事を進められるよう、大きな塊で仕事を切り出してあげる方が効率的。
ただ、あまりにも大きく仕事を切り出しすぎると、業務指示が曖昧になったり、仕事丸投げ放置になってしまい越境ワーカーにとって大きな負担になってしまう恐れも・・・。
バランスがとても肝要だと思いますが、思い切って権限委譲するとともに、計画的なチェックポイントを設けて越境ワーカーをサポートすることが不可欠だと思います。
社員だけれども業務委託を出す、業務委託だけど必要に応じて指示を出したり、積極的に相談に乗ったりする、という感覚かもしれません。
② 業務を通じた巻き込み力
物理的な距離や時差の関係で、越境ワーカーには個人業務をお願いする方がやりやすそう。
でも、あまり個人業務だけにすると疎外感が生まれたり、良い意見や視点を持っていてもチーム内に伝搬しなくなる可能性も高まってしまいます。
なので、越境ワーカーがチーム作業に加われるように仕事を采配するというのも上司の仕事。業務を通じて、組織に所属している一体感を作るのがポイントです。
どうしても個人業務ばかりになってしまう場合、例えばですが、業務工数の10%ぐらいをチームで行う業務改善活動に割り当てるというのも策です。
③ 話しやすい・相談しやすい雰囲気力
越境ワーカーからすると、日本の様子が見えないので、困った時に上司に相談して良いのか、どのタイミングなら声をかけていいのかちょっと分かりにくくて躊躇しちゃうもの。
一方、上司の視点だと、些細な案件なら少し遅れても良いですが、物事によっては早めに報告・相談してもらわないと困ってしまうこともあるでしょう。
なのでここは、越境ワーカーが気兼ねなしに相談できるよう、上司側の配慮が必要なところ。日頃からチャットや会議でカジュアルな会話を心がけて、「いつでも連絡してね」と伝えることも重要です。距離が遠い分、きちんと伝える、積極的に会話する、というのがとても大切だと思います。
②の巻き込み力が業務を通じたインクルージョンだとすると、③の雰囲気力はカジュアルな形でのインクルージョンかもしれません。
ちなみに、今、流行りのOne-on-Oneも良いですが、以前👇のnoteで紹介した「ざっそう」を日常的に上司が行うというのもオススメです。
https://note.com/embed/notes/n10a9d3ace81f
リモートワークが出来れば越境ワーキングもできるはず
越境ワーキングに不可欠なマネジメント力を書いてみましたが、実はこれらのスキルって越境ワーキングに限らず、普通のリモートワークにおいても重要なスキル。
つまり、本質的な問題は越境ワーキングの制度ではなくて、リモートワークで業務を遂行できるよう、どうやって中間管理職や中堅リーダーのマインドセットやマネジメント力を強化していくのか?ということなのかもしれません。
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