誰もが持っている Super Power
「ねっ、ねっ、ヒロシのスーパー・パワーってなに、なに〜？」
ワインで良い感じにほろ酔い気分になったYちゃんが、突然聞いてきた。
Yちゃんは、イスラエルからの女子大生。先学期、交換留学生としてオーフス大学にやってきた。昨年末に帰国したが、僕ら夫婦と同じ大学アパートのご近所さんということで、一緒に遊びにいったり、ご飯を食べたりして仲良くしていた。
そんなYちゃんに出会ったばかりの時、ニコニコしながら聞いてきたのが、冒頭の質問。
スーパー・パワーって、スパイダーマン的なネバネバした物を出したりするアレ？そんなすごい力、どうみてもこのヒョロヒョロ日本人が持っているようには見えないよね。もしかして、日本人は忍者だと思っている「外国人の勘違いあるある」じゃないか？
「私ね、みんな何かのスーパー・パワーを持っていると思うの！」そして「例えば、私のスーパー・パワーだけど・・・」と、クスクス笑いながら、自信満々に続ける。
「・・、トイレにほとんど行かなくて良い能力！！」
なんじゃ、その変な能力！！と吹き出してしまった。
大笑いしながら、「なにそれ！それってスーパー・パワー？」と聞くと、笑いつつも真剣な顔で、「だって、みんなほどトイレに行かなくて良いんだよ！女の子のトイレは混むから、トレイに行かなくて良いのは、ちょっとした能力なの♪」
そして、再び「で、ヒロシのスーパー・パワーはなに？」と聞いてきた。
うーん、そんな急に言われても思いつかないよ〜。と悩んでいたら、窮地を脱する良いアイデアを閃いた。
「あっ、うちの奥さんのスーパー・パワーはわかるよ！！見た映画の内容をきれいに忘れるから、何度でも同じ映画を見れるんだよ〜」
とりあえず、近くに居た奥さんをからかいつつ、話に巻き込んでしまうという作戦だ。後で怒られるかもしれないけれど、この場の会話はつなげられる・・・。
ここだけの秘密だが・・・、
僕の奥さんは映画を観ても内容を忘れてしまう。するっと抜けてしまうのだ。ドラマや映画を一緒に観ていると、「この映画、初めてかも〜」と言いながら楽しく見始めるが、僕は心の中で「一緒に観たよ。もうこれで3回目だよ・・・」とそっと呟いていたりする。でも、最後のエンディングあたりで、「あっ！この映画みた事あるかもっ」とはっと驚いたように思い出すあたりがちょっと可愛らしい。
そんな話をすると、「え〜！それ超すごぉい〜！先入観なくフレッシュな気持ちで映画を観れるから、毎回刺激があって楽しめるね。普通の人にはできないから、スーパー・パワーに認定！！」とYちゃんは大喜び。
＊＊＊
Yちゃん曰く、同じ人間でも個体差があるので、人は何かしら他人に比べて優れている点が必ずあるけれど、それに気がつかず自分の中では「普通なこと」と思い込んでいることが多いそうだ。
そこで、「あなたのスーパー・パワーは何？」と聞くと、本人すら知らなかった「特別なこと」に気がついて、大いに話が盛り上がる。
「ヒロシは、奥さんと一緒に同じ映画を観ても楽しいの？辛くないの？」と聞かれたので、「あんまり、苦じゃないかなー。今まで気がつかなかった細かいシーンとか、伏線を発見するから退屈はしないよ」と正直に答えた。
すると、「それ、スーパー・パワーじゃん！！ 同じ映画から、新しい何かを見つけるスーパー・パワーだよ！素敵！！」とテンション高く力説。
おっ、そうなのか！！役に立つスーパー・パワーではないけれど、干支で言うと、ひと回り以上も若い女子大生から褒められると、おじさん的にはちょっと嬉しい。えへへ😆 (イスラエル人だから干支は関係ないだろうけど・・・)
そして、目をキラキラさせながら、「いいなぁ。夫婦でとても相性が良いスーパー・パワーだよねぇ。パーフェクト・マッチ😍」と一言。
僕たち夫婦は、世界を救うヒーローにはなれないけど、映画鑑賞の最強コンビになれたみたいだ😅
実用的でないかもしれないけれど、他の人が持っていないスーパー・パワーがあると言われると何だか嬉しい。
＊＊＊
この後も、ワインを片手にみんなのスーパー・パワーで大盛り上がり。
ドイツ人のAちゃんは「見たくもない嫌いな蜘蛛を、気配のみで見つけられる能力」があり、スペイン人のA君は「ボードゲームのルールを瞬時に理解する能力」を持っていた。
楽しすぎて、ワイン・パーティーは深夜を超えてしまったのだが、残念ながら、二日酔いにならない能力は誰も持っていないかったようだ。
Yちゃんは、これからも「あなたのスーパー・パワーはなぁに？」と出会う人に聞くに違いない。
でも、気付いてしまった。
Yちゃんの本当のスーパー・パワーは、トイレの回数が少ないではなく「他の人のユニークなスーパー・パワーを目覚めさせる力」じゃないかと。。。
そして、その力は簡単に真似できる。一言こう聞くだけで良い。
貴方のスーパー・パワーは何ですか？
