デンマーク版マイナンバー(CPR番号)と NemID

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こちらの記事で、個人的に思った日本のマイナンバーカードの良い点とモヤっと点をシェアさせてもらいました。

今回は、デンマークのマイナンバー「CPR」と「NemID」をご紹介したいと思います。

※2023年3月現在  「NemID」が「MitID」に移行期間中です。詳しくはこちら👇

デンマークのマイナンバー「CPR」と「NemID」

デンマークのマイナンバーは、個人番号の「CPR」と本人証明を行う「NemID」で構成されています。

CPRは10桁の数字で、日本の12桁の個人番号(いわゆるマイナンバー)と同じような数字が割り当てられます。

デンマークでは日本のマイナンバーカードのような写真付きのICカードはありません。その代わりに、本人証明のためにマイナンバーに紐づいたログインIDがあり、NemIDと呼ばれています。

ちなみに、よくYellow Card (下の写真)が日本のマイナンバーカードと同じ物という紹介がされていますが、正確には違います。Yellow Cardはあくまでも健康保険証であって、マイナンバーカードのようにデジタルで本人証明をしたりオンラインサービスにログインするためのカードではありません。

画像10

さて、NemIDのNemは「簡単」という意味なのですが、名前の通りデンマークのマイナンバーを「簡単に便利」にしているのが、このNemIDというログインIDです。繰り返しですが、NemIDはログインIDなので、日本のようなICカードではありません。

NemIDで何ができるのか

NemIDを使うと、下記のことができるオンラインサービスにログインできるようになります。
・ほぼ全ての行政サービス(引越手続・公共料金支払い・税金・図書館利用など)
・医療サービス(予約・診療記録の確認・かかりつけ医とのメールやり取りなど)
・銀行のオンラインバンキング
・公共交通用の電子マネー(SUICAのような電子カードの申込み・チャージなど)

上記だけでなく、NemIDと連携している民間のサービスにも、NemID経由でログインと本人認証ができるようになります。

例えば、日本で銀行開設をしようとすると、本人証明のためにマイナンバーカードや免許証のコピーの郵送が必要です。デンマークではNemIDでログインできることが本人証明なので、銀行開設サイト上でのNemIDログインによって本人確認が一瞬で完了しますその際、NemIDに紐づいているCPR(マイナンバー)から住所なども自動で入力されます。

特に僕が期待しているのは、「会社設立の手続き」です。MyWorkという役所のサイトにNemIDでログインし、必要な項目を入力するだけで会社が設立できるそうです。日本の会社設立手続きとはかなり違うようなので(日本で一般社団法人を立ち上げた時は数ヶ月かかりました・・・)、今度、デンマークでの法人設立を実際にやってみたいなぁと思っています。出来たら、詳細をUPしますねっ!(何の法人なのか謎ですが、乞うご期待!笑)

NemIDのセキュリティと実際のログイン紹介

NemIDがあれば色々なことができてしまうので、他人がNemIDにログインできてしまうと大問題です。かと言って、日本みたいに写真付きのICカードがあるわけではないので、ここで心配になるのがセキュリティです。

NemIDは、パスワードとスマホを使った2段階認証という仕組みを取り入れています。一応、僕は情報処理安全確保支援士という国家資格を持っているのですが、この2段階認証は、安全性と利便性のバランスが良く、シンプル且つセキュアな方法だと思っています。

ここで、実際にNemIDの2段階認証を使って、行政サービスにログインするところをご紹介します。

それではPCのブラウザを立ち上げます!

① まずはPCのブラウザで、borger.dkのサイトを開き、メニューのDigital Postをクリックします。
・borger.dk は国/行政ホームページ
・Digital Postは国/行政が管理している電子私書箱(下の方で詳細を紹介します)

NemIDログイン 01

② Digital Postをクリックすると、NemIDのログイン画面が開くので、IDとパスワードを入力して「Next」をクリックします。(⭐️これがパスワードを用いた1段階目の認証です⭐️)

NemIDログイン 02

③ 「スマホに認証依頼するよ」という確認画面が出るので「Send」をクリックします。

NemIDログイン 03

④「スマホに認証依頼したよ」というメッセージが表示されるので、自分のスマホを用意します。

NemIDログイン 04

ここからはスマホ画面です
⑤ スマホに「NemIDの認証依頼が来ています」という通知が来ます。

NemIDログイン 05

⑥ NemIDアプリを起動すると、暗証番号が求められます。(僕はiPhoneSEなので、指紋認証のTouchIDを使います。妻は指紋認証が苦手なので暗証番号4桁を使用しています。)

NemIDログイン 06

⑦「認証依頼が来ていますが承認(Approve)しますか?」とメッセージが出ているので、Approveを横にスライドします。(⭐️これがスマホを用いた2段階目の認証です⭐️)

NemIDログイン 07

⑧「承認されました!」と表示されたら、PCのブラウザを確認しましょう。

NemIDログイン 08

ここからはPC画面に戻ります。
⑨ スマホでの2段階認証が完了次第、PCのブラウザのborger.dkが自動的にログインされて、Digital Boxの画面が開きます。

NemIDログイン 09

以上のような流れで、スマホがあれば簡単にログインができるようになっています。懸案のセキュリティに関しては、②で入力するNemIDのパスワード、それから⑤〜⑧で使うスマホ、の二つがないとログインできない仕組み(2段階認証)を取り入れているので、他人が成りすませないようになっています。

そして、②〜⑧の流れは、図書館のウェブサイトでも、銀行のオンラインバンキングでも、共通の手続きなので慣れるととてもシンプルです。

Digital Boxについて詳しく紹介

Digital Boxは行政が管理している電子私書箱で、オーフス市役所や警察などの行政から届いたメールが読めるようになっています。各メールの右側に王冠のようなアイコンがありますが、これは「公式な行政機関から来たメールだよ」という印なので、安心して開くことができます。(NemIDに連携している民間業者からも連絡が来ることがあるそうなので、その場合は王冠はつかないはず。。。)

行政機関からの連絡は全てDigital Boxに送られるため、市役所から物理的な郵便物は一切送られてきません。(ただし、最初のNemIDを設定するための書類だけは郵送で送られてきます)

また、Digital Boxで行政に問い合わせすることもできます。例えばですが、⑨の画面の一番上のメールは、運転免許証の取得手続きに関して、僕がオーフス市役所に質問した際の回答です。英語で電話の問い合わせをするのがちょっと自信がない場合、このDigital Boxを使ったメール問い合わせががお手軽です。回答に半日程度かかりますが、落ち着いて読み書きできますし、電話で聞き漏らすこともありません。

このNemIDを使うためには、事前にNemIDアプリをスマホにインストールして、NemIDと自分のスマホを紐づける手続きが必要です。しかし、スマホと市役所から送られてくる書類があれば簡単に設定できるので、日本でマイナンバーカードを使う手順よりもかなりハードルが低いと思います。(具体的な設定手順は、今度記事にしまーす)

日本のマイナンバー・マイナンバーカードに比べて優れていると感じるポイント

① ログインするだけで手続きが完了する手軽さ
NemIDに対応しているサービスなら、NemIDでログインするだけど本人証明がオンライン上で完了します。(日本ではICカードリーダーを使うか、マイナンバーカードのコピーを郵送/メールして本人確認を待たないといけません)

② 日常的に使えるシーンが多い
公共料金支払い、銀行のオンラインバンキング、電子マネーのチャージなど、日常的に使うオンラインサービスに幅広く対応しています。(日本で使えるのは確定申告と年金ぐらいで、日常的に使われるようなレベルに至っていません)

③ 安全性が高い
さきほど、Digital Boxでは公式な行政機関のメールは王冠アイコンが付くと紹介しました。Digital Boxは行政が管理している電子私書箱なので、悪意を持った人が行政になりすますような詐欺ができないようになっています。(日本の行政は郵送や電話を用いているので、本当に市役所や警察から送られてきたものかどうか判断するのは難しく、還付詐欺やオレオレ詐欺に悪用されやすい)

また、日本のマイナンバーカードは本人認証書類として使えるので、カードを失くすと悪用される危険性があります。デンマークでは、1段階目のパスワードと2段階目のスマホの両方がないと本人認証ができません。もしスマホを無くしても、NemIDとスマホの紐付けを止めれば安全です。(スマホを失くすのは別の意味で痛いけど・・・)

***

朝日新聞の記事『マイナンバーカード未取得「理由提出を」 各省庁職員に』に戻りますが、マイナンバー カードの取得率が低いのはシンプルに①カードを持っているメリットがなく(使い道がない)、②特殊な機器や設定が難しい(面倒)ということだと考えます。

まぁ、デンマークがCPR(個人番号)を導入したのが1968年、NemIDを導入したのは2010年です。デンマークも時間をかけてここまで便利にしてきたのだと思うので、もう少し長い目で日本のマイナンバー/マイナンバーカードに期待したいと思います。

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